第29回イチロクカンファレンスは、先輩スタートアップから急成長の秘訣を学ぶ回!
というわけで今回のゲストスピーカーは、コーヒー業界に新しい旋風を起こしてきた猿田彦珈琲株式会社・代表取締役 大塚朝之さん。
『たった一杯で、幸せになるコーヒー屋』をコンセプトに、ホスピタリティを軸とした高品質コーヒーの究極を目指した日本発のコーヒーブランドとして躍進中です。
2011年6月、恵比寿に誕生した猿田彦珈琲は、今や東京都内を中心に国内14店舗、台湾3店舗を展開する有名店。
しかし創業当時は、お金もなければ知識もない…まさにゼロからのスタートだったのだとか。
もともとは俳優業を志していたという大塚さん。役者の道を諦めコーヒー豆販売店でアルバイトを始めたことをきっかけに、コーヒーに没頭。高品質のスペシャルティコーヒーをたくさんの人に届けたいという思いからコーヒー専門のカフェを開くことを決意しました。しかし経営のノウハウもなければ珈琲マシンも使ったことがない、「何の知識もないところからのスタートだった」と言います。
資本金は0円で、友人たちに融資をお願いするなど必死に搔き集めた資金で店舗を自らの手でリノベーション。珈琲店の必需品であるエスプレッソマシンやグラインダーなどは、購入する余裕はなくリースで用意しました。
そうして迎えたオープン初日、なんと400人ものお客さんが来店!
「僕が長い期間かけて必死でリノベーションしていたもんだから、街の人達も覚えてくれていて。応援してくれてましたね。オープン前につぶれるんじゃないかって思われてたかも」と笑う大塚さん。
こうして嬉しくも慌ただしいスタートを切ってから、1年が経とうとする頃。
バリスタをやっていた友人に「君のエスプレッソはすごく不味い!」と言われ、その後3日間かけてエスプレッソの入れ方をみっちり教わることに。
講習にかかったのは1日10万円と、けして安い額ではないものの、おかげエスプレッソの難しさ、楽しさがわかり「いい投資になった」と語ります。
その後、日本の大手コーヒーブランドであるジョージアとの共同開発で生まれた新しい「ジョージア ヨーロピアン」が大きなきっかけとなり、雑誌の取材を受けるなど都内で注目を浴びる有名店へと駆け上がりました。
金融機関からの融資も受けやすくなり、ついに焙煎機を導入。
2015年に焙煎機つきの店舗をオープンし、2017年には調布にさらに大きな焙煎所を構えました。その設備投資の額は莫大で、「本当に苦しかった」と振り返る大塚さん。「常にお金がない状況を今だに味わっている最中」だそうで、経営者の先輩には『お前がやっているのは経営じゃない!』と言われるほど。それでも走り続けられる一番の原動力は、「コーヒーは面白い」という、シンプルながらも変わらない思いがあるから。
そんな大塚さんが目指すのは、ただ高級で最高品質のコーヒー豆を使ったコーヒーを提供するお店、ではなく、コーヒーの面白さを感じてもらいながら日常的にコーヒーを楽しんでもらえる”街のコーヒー屋さん”。
「例えば、日本一のタマゴを使ったサンドイッチよりも、嬉しい気遣いをしてくれる街のサンドイッチ屋さんに僕は行きたい。地元の美味しい食材とか、そういう魅力をいかに見つけていくか。それが街のコーヒー屋さんの役目なんじゃないかなって」と語ります。
国内のみならず海外にも店舗を展開するなど、止まらぬ勢いで成長し続ける猿田彦珈琲。
これからの活躍にも目が離せません!